「評価者に必要な心構えと基礎知識」株式会社杉山様 評価者研修レポート

レポート 研修受託事業

株式会社杉山(以下 杉山様)は、紙おしぼりをはじめ、厨房で使用されるキッチンペーパー、トイレの便座シート、靴磨き等の紙加工品の製造及び販売をしている会社です。

創業からは70年以上が経過し、これまでに取得した特許は100を超えています。高い技術力を活かし、他社では実現できない細やかなニーズを満たした製品の提供を強みとしています。その強みを生かし、お客様のニーズに応えた商品提案や販売促進を行うために、営業部門(グループ会社)として、株式会社東京クインも運営されています。

当社は、杉山様の労務顧問も担当させて頂いており、人事評価制度の導入から携わらせて頂きました。
8月23日には、評価者の皆様にお集まりを頂き評価者研修を実施しましたので、その内容についてご紹介をさせて頂きます。

人事評価を行う目的

まず、はじめに人事評価は何のために行うのかを評価者の皆様に考えて頂きました。
その結果、以下のような意見があがりました。

  • 公平・公正に社員を評価するため。
  • 頑張った分だけ評価をされるので、仕事に対するモチベーションの向上が期待できる。
  • 評価シートを渡すことで、会社がどのような姿勢や行動を期待しているのかを伝えることができる。
  • 評価シートに基づき評価をし、面談で確認をすることで、社員の成長を促すことができる。
  • 上記のような効果を積み上げることで、最終的には会社の業績向上に繋がる。

人事評価を行う目的は、「適正な処遇」、「ワークモチベーションの向上」、「人材育成」、「業績向上」等であるとの整理をすることができました。

その上で、人事評価制度が上手くいなかい1つの要因として、目的が複数考えられるため、何のためにやっているのかが、時間の経過や各人の理解の誤差により、不明確になってしまうケースがあることをお伝えしました。 そこで目的の重要性を確認し、杉山様が人事評価制度を導入した目的や経緯について、改めて共有をする時間を設けました。

評価者に必要な心構えと基礎知識

当然ですが、評価者も人間になります。人に対しての好き嫌いもあれば、その人が持っている個性や価値観があります。
まず、評価者が最初に気をつけるべきことは、評価者は会社から与えられた役割であり、自分が対象者よりも人間として優れているという誤解をしないことです。

評価者には、対象者が人間として優れているかどうかという人物評価を行う権限は与えられていません。
あくまで、評価シートに定められた仕事に必要な姿勢や能力等の項目に関して、対象者の事実や行動等に基づき評価を行うことになります。

従って、私情等は考慮せずに、適切に評価を行うことが重要となります。そこで、適切に評価を行う上で必要となる心構えや基礎知識等について情報提供をさせて頂きました。

日頃から部下を観察し、記録や対話をする習慣を身につけること

人事評価でよくあるエラーの中に、評価が真ん中(普通/良くも悪くもない)に集まってしまう「中心化傾向」や、部下に嫌われないよう配慮してしまい、真ん中よりやや甘め(やや良い)に集まってしまう「寛大化傾向」というものがあります。

または、期中は人事評価のことを全く忘れていて、期末になり、焦って最近の出来事だけの事実・行動のみで評価をしてしまう「期末評価」というエラーをおかしてしまうケースもありえます。

これらは評価者がやってはいけないエラーになります。そして、これらのエラーをしてしまう最大の要因は、日頃から部下を観察する習慣がないことにあります。

部下の仕事ぶりや、どんな気持ちやモチベーションで仕事をしているのかが分からなければ、良い・悪いの評価はできません。また、面談時には、評価をつけた根拠を部下に説明し、来期の目標設定や達成するための方策について話し合う必要があります。

つまり、日頃から部下を観察し、その根拠を記録しておき、定期的に部下の気持ちを知るためにコミュニケーションをとっておかないと、評価をつける時点で、自信を持って評価することができないのです。そこで、無難な点数をつけてお茶を濁すという選択に至ってしまうわけです。 研修では、そのようなエラーをおかさないよう、期中の観察方法や評価理由のつくり方について、自らの実践をベースとした情報提供をさせて頂きました。

よくある7つの評価エラー

評価者がおかしてしまう、よくある7つのエラーについても解説をさせて頂きました。

エラー名称エラーの内容
中心化傾向評価が真ん中(普通/良くも悪くもない)に集まってしまうこと。
寛大化傾向評価が真ん中より甘めに集まってしまうこと。
ハロー効果一つの良いことで全体の評価が引きあがってしまうこと。反対もある。
逆算化傾向初めに評価結果を決めて、その後に中身を調整してしまうこと。
論理誤差「彼は学生時代はサッカー部に所属していて、集団生活を続けてきたので、
コミュニケーション能力は高いはず」、などと勝手に評価してしまうこと。
対比誤差評価者が自分と比べて評価してしまうこと。
期末誤差評価期間全体ではなく、期末近くの事実・行動のみで評価してしまうこと。

おわりに

杉山様は、最近代替わりをされました。若い社長のもと、果敢に新しいことにチャレンジをされており、人事評価制度の導入もその一環であると理解させて頂いております。

企業経営において、これまで積み重ねたものを管理する・維持する『マネジメント』は大切です。しかし、これからは、外部環境、テクノロジー、組織、人材の変化に合わせて、革新する・挑戦するといった『リーダーシップ』は、マネジメント以上に大切になってくると感じています。

微力ながら、杉山様の挑戦に伴走できるよう、精一杯役割を務めてまいります。

大道 和哉