「外国人従業員が輝けば、企業が元気になる」 富士市主催・外国人雇用企業向け講座実施レポート

お知らせ 外国人支援

令和5年2月16日に富士市主催の外国人雇用企業向け講座の講師を弊社大道が担当しました。外国人雇用に関心のある企業の経営者様、人事担当者様20名程にご参加を頂きました。

本事業実施の背景としましては、全国的に製造・建設・介護・農業等の現場における労働力不足が深刻化する中、富士市でも外国人の雇用を検討する企業が急増している点にあります。この流れを捉えて、富士市(市民活躍・男女共同参画課)では、外国人を雇用している、または雇用を検討している企業様向けの講座を企画することになり、当社がお手伝いを担わせて頂く運びとなりました。

この講座では、今後の経営を取り巻く環境を理解した上で、地域企業が外国人雇用にチャレンジする必要性、雇用する際に注意すべきこと、外国人と力を合わせるためのコツ等についてお伝えをさせて頂きました。その一部をこちらのレポートでご紹介させて頂きます。

これからの地域企業の経営課題について

令和 4 年版高齢社会白書より

約1億2500万人いる日本の人口は、約40年後には約8,800万人(現在の約70%)になると推測されています。2021年に厚生労働省が発表したデータによると、1年で生まれた子どもの数は84万2897人、1年で死亡した人の数は145万2289人となっており、1年で60万人以上の人口が減っています。

県庁所在地である静岡市の人口が令和5年2月時点で約68万人です。1年でその位のボリュームで人が減っていると考えると、ものすごいスピードで人口減少が進んでいることを実感します。

それに加えて日本は高齢化も大きな課題です。40年後の高齢化率は約40%に達すると推察されています。人口は7割程度にまで減り、そのうえ、まちで暮らす人の2.5人に1人以上が65歳のおじいさん・おばあさんになるということですから、未来の富士市が労働力不足に悩まされることは自然の流れとも言えます。

さらに若い世代の就職希望先は、営業・企画・マーケティング・エンジニア等のホワイトカラーのお仕事に集中しています。現場で直接作業を担うブルーカラーのお仕事を希望する方は減少傾向にあり、数年前から採用が非常に難しくなっています。

このような状況から、「労働力を確保して定着を図り、成長を促して成果を上げること」が、これからの地域企業の本質的な課題となってきます。
良い悪いはともかくとして、経営者は「会社が人を選ぶ時代」から、「人が会社を選ぶ時代」へと転換したことを正しく認識する必要があります。

外国人雇用の現状と、「技能実習生」「特定技能」受入れの仕組み

出入国在留管理庁HP より

これからの苦しい日本の情勢の中で、労働力不足を解消するための最たる手段の1つが外国人雇用になります。
外国人が日本で生活するためには在留資格を取得しなくてはなりません。在留資格とは、入管法上の資格です。在留資格ごとに日本に在留する間、その外国人がどんな身分で、どんな活動ができるかが定まっており、その資格を証明するために在留カードが発行されています。
現在、在留資格の種類は29種類ありますが、企業がブルーカラーのお仕事の担い手として外国人雇用を検討した場合には、「技能実習生」か「特定技能」のどちらかを選択するケースがほとんどかと思います。

令和4年12月末時点で日本にいる技能実習生は約35万人、特定技能は約13万人です。注目すべきは特定技能の増加率です。令和3年12月時点では5万人でしたが、1年の間に8万人近く増えています。
これだけ急増した理由としては、コロナ禍による水際対策で入国できなかった外国人がまとまって入国したことや、特定技能として入国できるルートが整備されたこと等(支援体制が確立、技能・日本語試験の充実)が挙げられると思います。

また技能実習(3年・5年)を良好に終えた場合には、試験なしで特定技能に移行(一部、移行できない職種あり)することが可能であることを考えると、継続的に特定技能として働く外国人が大幅に増加していくことが予測されています。

このように外国人労働者数は、企業の生き残りをかけた人員確保の取組に伴い、待ったなしで増加しています。この流れは確実に年々加速していきます。 そのような中、多くの企業が自社のみで外国人雇用を準備・対応するには限界があり、不安を感じています。私たちは労務の専門家である社会保険労務士として、また外国人の生活を支援する実務者として、企業様のパートナー役となり、安心して外国人を雇用できるサポートができるよう努めています。

支援事例 富士山メソッドプロジェクト

支援の事例として、私どもが進行役を務めている富士山メソッドプロジェクトを紹介させて頂きました。このプロジェクトは、富士市の企業・地域・行政と連携し、外国人を家族のように迎え入れ、仕事はもちろんのことプライベートの充実までサポートしよう!という取組です。詳しくはポータルサイトをご覧ください。

このプロジェクトの発足は、日頃から多くを学ばせて頂いている企業経営者様より「これからの富士市は労働力不足になり、外国人労働者に頼るようになる。富士市で全国のお手本となるようなプロジェクトをつくろう!」と声をかけて頂いたのがきっかけでした。

私は近い将来、日本人と同様に「会社が外国人を選ぶ時代」から「外国人が会社を選ぶ時代」へと状況は変化していくと予測しています
残念なことに、既に日本の賃金はアジアの他国と比較して、決して高い水準ではありません。外国人にとってはオーストラリアや韓国の方が高い年収を得ることができます。実際に外国人と話をしていても、日本を第一希望として来日した人ばかりではないことが分かります。

つまり、しばらくは良いかもしれませんが、最終的には賃金だけではない、独自の魅力をつくらなくては選ばれなくなってしまいます。それは日本人の採用課題とも共通しています。最終的には地域や企業のブランディングというテーマに帰着します。

私は、その魅力をこのプロジェクトを通してつくりあげたいと考えています。その魅力とは「思いやりの心」です。
富士山の麓で暮らす私たちは、血相を変えて働く都会の人達に比べたら、危機感が弱く、少しのんびりしていているかもしれません。しかし、一方で人との繋がりを大切にし、世話好きで、思いやりのある文化が根付いているとも感じています。
外国人支援のお仕事の実践を通して、これまでは欠点とすら感じていたこれらの点が、実は私たちの最大の魅力であることに気がついてきました。もしかしたら、私たちは変化するものばかりに目を奪われて、自分達の大切な強みや価値観を見落としているのかもしれません。

確かに賃金水準は重要で、世間並に支払うことができるよう、企業は努力し続けなくてはなりません。しかし、それだけでは、両隣に最低賃金が高い東京都、神奈川県、愛知県の企業がひしめき合う中で選んでもらうことはできません。

そこで、富士の地域や企業にはプラスして、「思いやりの心」に溢れた文化がある。そんな富士を選んでくれる外国人ならば、きっと地域と共生し、長く働いてくれるものと信じています。
外国人雇用が進んでいく事実を前向きに捉えて、富士山メソッドプロジェクトのスローガンである「富士山の麓でみんなが幸せになる!」の実現を目指し邁進してまいります。

おわりに

最後までお読み頂きありがとうございました。

このレポートでは説明しきれない部分が多く、皆さまには理解しにくい点もあったかと思います。もし、外国人の雇用や富士山メソッドプロジェクトについて、ご質問やご相談等がございましたらお気軽にWEBサイトからお問い合わせください。

大道 和哉